無添加住宅開発者
秋田憲司が物申す

Vol.5 スーパー省エネ素材「漆喰」

土や石や木と共に、古来より世界中で使用されてきた建築素材「漆喰」。
一般に紹介されている優れた特性として、耐火性、調湿性、抗菌性等々がありますが、今回は少し違う側面から漆喰を考えてみたいと思います。
では、ここで問題です。
右図のようなAとBの容器が2つあります。
さて、熱いお茶を入れておくなら、どちらが熱さを長く保てるでしょうか?

答えはBの白い方の容器です。
黒く荒い表面の容器では熱いお茶は早く冷め、冷たいビールは早く温まります。
では何故か説明しましょう。
熱は、伝導・対流・放射という3つの伝わり方で広がっていきます。
伝導は物質の中を熱が温めたところから順に伝わる伝わり方で、対流は、温められた液体や気体が移動することで起こります。
放射は、熱が光と同じように真空の空間をも伝わっていく伝わり方です。
だから、真空の宇宙空間を通って地球に到達する太陽の熱は、伝導や対流ではありません。これが、放射です。
熱くなったフライパンに手をかざすと熱を感じる。これも放射です。
空気が対流してフライパンから手に熱を伝えたのではありません。
放射の正体は電磁波です。光や電波も電磁波の仲間です。
人間の感覚で熱と感じるのは赤外線領域の放射です。

全ての物質は様々な波長の電磁波を放射しています。
電荷を持った分子や原子が振動してエネルギーを持っているからです。
これを利用しているのが赤外線カメラです。
高温の物体ほど短波長の電磁波を放射しています。
また、物体は放射し続けるとエネルギーを失い温度が下がります。
しかし、他の物体が放射したエネルギーを吸収します。
これは同時に起こっています。
物体が一定の温度を保っているなら、放射したエネルギーと等量のエネルギーを吸収しているということなのです。
放射の割合が高いと温度は下がり、吸収の割合が高いと温度は上昇します。
物体の周囲より物体の表面温度の方が高いと、物体は放射と吸収を同時に行うものの、放射量の方が大きくなります。
逆に表面温度の方が低いと物体は吸収体になります。
放射と吸収は物体の表面で起こるのです。
表面が複雑であるほど表面積が広く多重散乱が起きるので、放射・吸収の効率は高くなります。
また同時に、物体は外からの赤外線エネルギーを吸収するだけでなく、反射させてもいます。
可視光線の領域で、光をよく反射するものは白く見え、よく吸収するものは黒く見えるのと同様に、赤外線の領域でも、同じことがいえます。
放射を完全に吸収するのは、反射が全くなく可視光線も反射しない真っ黒なもので、完全黒体と呼ばれるものですが、これは現実には存在しません。
余談ですが、この原理を利用しているのがあの黒いジェット機アメリカのステルス戦闘機です。
黒体に近い素材である炭素が塗ってあるから、レーダーの電波を吸収して反射させないのでレーダーに映らないのです。
話しを戻しますと、黒体は効率の良い吸収体ですが、他の物体と同じ様に周囲よりも温度が上がると今度は効率の良い放射体に転じます。
これが黒体の特性です。
上記のようなことから解るように、黒い荒い表面の入れ物は熱いお茶を入れたとき放射体となって、お茶が周囲の温度と同じになるまで電磁波(赤外線)を効率よく放射するのです。
逆に言えば白い入れ物は、効率の悪い放射体と言えるのです。だから白い入れ物はお茶が冷めにくいのです!
さて、このへんで漆喰の話しをしましょう。
上記の入れ物と同じように黒い壁の家と漆喰壁で出来た家があるとします。
冬の寒い日、一度温めた室内の温度はどうなるでしょう?
そうです。黒い壁の家より、白い漆喰壁の家の方が温めた熱エネルギーを長く維持します。
また、漆喰は、方解石というキラキラとした小さな結晶が集まって出来ている反射効率の高い素材でもあります。
日射しの強いエーゲ海では家々が白い漆喰で塗られているのをご存知でしょう。
これは美観だけではなく、太陽の強い赤外線や紫外線を反射させ、室内の涼しさを保つのに打って付けの素材であることを昔の人々は経験で解っていたのでしょう。

化学建材の出現等、様々な理由で一度すたれてしまった漆喰壁。 シックハウス、地球温暖化、原発再稼働、電力危機等待ったなしの状況のなか、もう一度漆喰という素材を見直してみませんか?省エネを考えることは家計の節約にもつながります。 漆喰は健康性能はもちろん。夏は涼しく、冬は暖かい住環境をつくる、地球環境や家計にもやさしいスーパー省エネ素材です。